ボストン日本人研究者交流会 (BJRF)

ボストン在住日本語話者による、知的交流コミュニティーです。

過去の講演

| 2024 | 2023 | 2022 | 2021 | 2020 | 2019 | 2018 | 2017 | 2016 | 2015 | 2014 | 2013 | 2012 | 2011 | 2010 | 2009 | 2008 | 2007 | 2006 | 2005 | 2004 | 2003 | 2002 | 2001 | 2000 |
| 基調講演一覧 | 特別講演一覧 | Best Lecture Award |

2021

第194回 講演会

日時: 2021年12月18日(土) 16:00-18:00
会場: MIT E51-145での現地開催・Zoomによるオンライン開催のハイブリッド形式
「色素細胞と転写の話 ~ボストン留学15年を振り返る~」

川上 聡経 氏
Massachusetts General Hospital / Harvard Medical School


子供の頃から英語が好きで「いつか海外に行ってみたい」、皮膚科医として臨床に携わった経験と大学院の研究を通して「悪性黒色腫を予防したい」と夢見ていた私は、2006年9月4日に、誰も知り合いがいないボストンに来ました。 それから15年の月日が経ちました。本講演では、私がボストンで学んだ、私が研究している、メラニンという色素を作り、私たちの目・皮膚・髪の色を決める「色素細胞」にまつわる 話、私が気づいた「コミュニティ」の大切さ、そして、私がこれから取り組みたい「美容×健 康」の研究についてお話しします。本講演が、みなさんと一緒に私の留学を振り返り、みなさんに「海外留学」「サイエンス」「コミュニティ」について考えてもらうキッカケとなると嬉しいです。

第一講演
「レーザの原理・特徴とその産業応用-自動車業界を中心に-」

宮戸 泰三 氏
MIT Sloan Fellows MBA, 株式会社デンソー


日本のサラリーマンエンジニアとして10数年生きて参りましたが、自分の技術的バックグランドは何かを考えてみると、「レーザ」だろうとの思いに至りました。レーザというと皆様は何を思い浮かべますか?スター・ウォーズのライトセイバーでしょうか?身近なものではレーザポインターがありますね。過去の日本人研究者交流会でも、要項にレーザというワードが入っている講演が6件あり、社会全体ではマイナーな存在の「レーザ」が、時に皆様の目に触れることがあるわけです。しかし、実際のところどのような特徴を有し、いかなる原理によってそのような振る舞いをするか、そしてその産業界での用途となると、なかなか触れる機会がないかと思います。本講演では、前半でレーザの原理と、その本質的な特徴をボース=アインシュタイン凝縮という現象にも触れながらお伝えし、後半では私が経験したレーザの産業応用について、自動車業界を中心にご紹介いたします。

第二講演

第193回 講演会

日時: 2021年11月20日(土) 16:00-17:00
会場: MIT E51-335での現地開催・Zoomによるオンライン開催のハイブリッド形式
「光機能性材料が創り出す未来」

桜田 智明 氏
MIT Chem Eng/AGC Inc.


テレビを始めとした表示素子は、近年大きな進化を遂げました。家電量販店に行ってみると、「液晶」、「OLED」、さらには「QLED」など、薄型、軽量で、色再現性が高く、かつスポーツなど動きのある映像も鮮明に見えることを謳った商品が数多くあります。これら表示素子の実現には、有機色素や量子ドットといった、新規光機能性材料の開発が不可欠でした。素子の進化と共に、材料も目覚ましい進化を遂げてきたのです。開発当初は効率が低く、耐久性も低かった材料を実用化につなげたのは膨大な量の基礎研究があってこそです。そんな基礎研究に目を向けてみますと、材料の物性評価にも、レーザー分光を始めとした、「光」が活躍しています。本講演では、表示素子の進化の過程とそれを支えてきた「レーザー分光」の最新研究紹介を通じて、私たちの暮らしを陰ながら支える「光」について考えてみたいと思います。

第一講演
第一講演

第192回 講演会(オンライン開催)

日時: 2021年10月16日(土) 16:00-18:00
会場: Zoomによるオンライン開催 (講演者のみ現地より配信のハイブリッド形式)
「エネルギーと災害~技術の未来を添えて~」

牧野 祐也 氏
経済産業省


皆様ご存知の通り、日本は災害が多い国です。地震・雷・火事・親父と言いますが、洪水や台風はほぼ毎年のように大きな被害を与えています。こちらに留学する直近まで、私は中央政府から被災現地への派遣員や、東京からの調整を行ってきました。西日本豪雨、胆振地震、房総半島台風、球磨川洪水に対応してきました。「災害現場で自衛隊はよく見かけるが、一体他の役人は何をしているんだろう?」と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、実は見えないところ(主に現地の役場や避難所、一定の救助が終わった箇所)で色々やっています。例えば体育館の大改造。私が対応してきた災害は地震を除けば夏から秋にかけて発生したものが多いです。そして、多くの場合、被災された方は付近の学校の体育館に避難します。体育館は住むためには作られていないので、住環境がよくありません。つまり、暑いのです。なので、電気工事をして無理矢理エアコンをつけました。このように、本講演では、特に秘密にしていないのに知られざる災害現場の裏側を電力等の観点から実体験に基づいてお話ししたいと考えています。

第一講演
「Drug Repurposingによる新薬開発―ボストン/眼科薬の視点から―」

國信 健一郎 氏
ニプロ株式会社


医薬品の使い方はFDAなどの規制当局によって厳密に定められておりますが、承認された(あるいは開発中の)疾患とは異なる疾患に用いることをDrug Repurposingと呼びます。現在、世の中の95%、数にして6500以上の病には治療薬がなく、その解決方法のひとつとしてDrug Repurposingが注目されています。それはどうしてか。本講演では、そのような疑問に答えるとともに、Drug Repurposingによる新薬開発手法ついて、製剤やインセンティブの視点から分析します。また、ボストン近郊で現在進行中の研究開発や実際に医薬品となった眼科薬の事例などから、今後のDrug Repurposingによる新薬開発について考えてみたいと思います。

第二講演

第191回 基調講演会(オンライン開催)

日時: 2021年9月18日(土) 16:00-17:40
会場: Zoomによるオンライン開催
「地震以外の地震学」

石井 水晶 氏
Professor of Earth and Planetary Sciences, Harvard University


地震学者です、と名乗ると大抵「次の大地震はいつ起こりますか?」という質問を受けますが、地震の研究はしていない、と説明すると「では、何を?」となります。昔から火山噴火や核実験の監視、地球の内部構造の探求などは地震学者の十八番でしたが、最近は地震計の軽量化、省エネ化、低コスト化により多彩な研究が可能になってきました。電車の振動を使ってその周辺が地震が起こった時にどれほど揺れるかを推計したり、干魃や農業などによる地下水位の低下を調べたりと以前では考えられなかったような応用が次々と発表されています。10数年分のデータの解析によって世界規模の氷河や海氷面積の減少、地滑りの増加など地球温暖化による環境変化の検証も始まっています。ただし、温暖化以前の状態と比べるには古いアナログ地震計記録の解析が必要となり、記録のデジタル化を行わなければなりません。本公演では地震学者による地震以外の研究と日本の高校生も巻き込んだ地震計記録のデジタル化の取り組みを紹介したいと思います。

第一講演

第190回 講演会(オンライン開催)

日時: 2021年5月15日(土) 16:00-18:00
会場: Zoomによるオンライン開催
「Designing Actuated Tangible UIs ―日常的な手触り感とデジタル情報・ロボティクスが融け合う未来のユーザインタフェース」

中垣 拳 氏
Research Assistant, PhD Candidate
MIT Media Lab


私は、ダイナミックに変形し動く、未来のユーザインタフェース(UI)の研究に取り組んでいます。現在、一般的に普及しているコンピュータは、平面的で視覚中心的なUIに制約されています。一方、私たちの生活空間には、手触り感に満ちた素材や道具などに溢れています。私の研究では、Actuated Tangible UIsと題し、ロボット技術を用いながらも、身の回りの手触り感に着目することで、物質がダイナミックなデジタル情報と融け合った未来を創造しています。本研究は、MIT Media Lab 石井裕教授('Tangible User Interface'[1997]の提唱者)の下で推進してきましたが、近年は特にロボティクスや材料工学など、従来のUI研究から逸脱した多彩な分野との融合が加速しています。私の講演では、MITでの7年間の研究プロジェクト群を軸に、最先端研究の動向や、'心と手'(MITのモットー)に根ざした研究プロセスについて、お話しをさせていただきます。

第一講演
「大腸癌死を防げ~基礎と臨床からの取り組み~」

日暮 琢磨 氏
Massachusetts General Hospital
Yokohama City University


大腸癌は世界で、罹患率4位(男性3位、女性2位)、死亡率3位(男性3位、女性4位)日本では、罹患率1位(男性3位、女性2位)、死亡率2位(男性3位、女性1位)となっており、今後も横ばいから増加が予想されています。そのため、死亡率抑制のためには対策が必要です。大腸癌は早期発見すれば、ほぼ完治することができるので、早期発見および早期治療が非常に重要です。早期発見には検診などのスクリーニング検査、また早期治療としては内視鏡治療が非常に有効です、また近年は化学療法なども進歩が著しいです。ではそもそも大腸癌にならないようにするにはどのような方法があるでしょうか?本講演では、私がこれまで臨床現場で行ってきた診療の実情や、現在取り組んでいる基礎研究など大腸癌を防ぐために行っている取り組みについてお話ししたいと思います。

第二講演

第189回 講演会(オンライン開催)

日時: 2021年4月17日(土) 16:00-18:00
会場: Zoomによるオンライン開催
「自動運転 ー モビリティをどう変えるのか?」

江坂 俊徳 氏
MIT Sloan School of Management
Toyota Motor North America


運転席に人間がいないロボタクシーが路上を走っていることをご存じですか? どらえもんのひみつ道具「ロボット・カー」は40年たって実現に近づいています。本公演では、世界中で技術開発が進む自動運転の定義、現状、そして立ちはだかる課題を紹介します。 なぜ、レベル4の方がレベル3よりも実用化が先なのか? スタートアップやライドシェアが数兆円も投資して開発を続ける理由は何か? 交通事故は低減するのか? 自動運転のメリットを踏まえて、それをどう活かしていくのか、皆様と一緒に考えたいと思います。 後半では、自動運転の基本的な仕組み、センサー、必要な技術、現在の主な技術課題をご説明いたします。私はトヨタ自動車で予防安全・運転支援システムの製品を開発し、事故低減に努めてまいりました。本公演を通して、皆様の自動運転に対する理解が深まり、より安全なカーライフにつながることを願います。

第一講演
「スタートアップ投資の法的メカニズム ~投資家とベンチャー企業の駆け引き~」

伊豆 明彦 氏
MIT Sloan School of Management
西村あさひ法律事務所 弁護士


『ベンチャー企業がシリーズAで100億円の資金調達を実施!』 最近は日本でもベンチャー企業による大型の資金調達のニュースを耳にする機会が増えてきました。しかしながら、UberやAirbnbのように成功するスタートアップはほんの一握りで、ほとんどのスタートアップは数年のうちに消え去ってしまいます。このように過酷なスタートアップ業界ですが、アメリカでは年間に約14兆円もの資金がベンチャー企業に投入されています。投資家は大きなリスクを背負っており、スタートアップエコシステムにおいて重要な役割を果たしていますが、スタートアップ投資契約において投資家を守るための仕組みが数多く存在していることをご存知でしょうか。 本講演では、多額の資金が動くスタートアップ投資において、投資家とベンチャー企業がどのように交渉を進めていくのか、また、スタートアップ投資契約においてどのような法的メカニズムにより投資家が守られているかについて、法律に触れるのが初めての方にも分かりやすくお話したいと思います。

第二講演

第188回 講演会(オンライン開催)

日時: 2021年3月20日(土) 16:00-18:00
会場: Zoomによるオンライン開催
「組織の集団的知性、そしてAI+人間のポテンシャル」

三浦 弘孝 氏
MIT Sloan School of Management
MIT Center for Collective Intelligence


通信データを使って企業の業績を予測できるか?人間とAIを組み合わせたらAIあるいは人間単独よりも10倍以上のパフォーマンス(super intelligence)を発揮することは可能か?IQ(知能指数)で個人の知能が測定できるように、近年の研究では集団にも集団の知能を表す集団的知能(collective intelligence)が存在すると報告されています。神経科学では人間の意識を測定する一つの方法として『φ』(ファイ)理論が提案され、さらに時系列データを使ってファイを推計する手法が開発されています。本講演では最近発表された集団的知能とファイの相関に基づいて現在研究が行われている、Eメールの送受信データを活用したプロジェクトを紹介します。また、OpenAI(人工知能研究所)が去年リリースしたGPT-3(Generative Pre-trained Transformer 3)を使ってAI+人間の組み合わせがどのようなパフォーマンスを発揮できるかという研究にも触れてみたいと思います。

第一講演
「フェムト秒レーザーと超高速イメージング 〜色(波長)に時間情報をスタンプするSTAMPカメラ〜」

鈴木 敬和 氏
株式会社 資生堂 グローバルイノベーションセンター
元 慶應義塾大学・博士課程教育リーディングプログラム「超成熟社会発展のサイエンス」RA4期生(2020/3 修了)


レーザー光には、レーザーポインターの様に単色光を連続的に出力するCW (continuous wave) レーザーと瞬間的に強いパワーを断続的に放出するパルスレーザーがあります。特に、1980-90年代に実現・普及した光パルスの時間幅がフェムト (10^-15) 秒のレーザーは、超短パルスレーザーの代表格として広く、産業、医療、理学研究分野で応用されています(フェムト秒レーザー増幅器は、2018年度ノーベル物理学賞を受賞)。フェムト秒レーザーは、単色のCWレーザーと異なり光パルスの中に異なる色(波長)成分を有しており、これらの各波長が干渉し強め合うことで短パルス化 (モード同期) が実現されています。本講演では、このフェムト秒レーザー光パルス内の「色」を時間的・空間的に操ることで、超高速なストロボ光として2次元連写イメージングに応用したSTAMP (Sequentially Timed All-optical Mapping Photography) 技術とその展開について、私の学生時代の研究内容(SF-STAMPの開発・応用)を中心に紹介したいと思います。

第二講演

第187回 講演会(オンライン開催)

日時: 2021年2月20日(土) 16:00-18:00
会場: Zoomによるオンライン開催
「なぜ未だにがんは治らない病気なのか 〜システム薬理学で見つけるがんの特効薬〜」

嶋田 健一 氏

Research Associate, Harvard Medical School


本講演では「がんを治す薬(抗がん剤)」の話をします。過去数十年に渡り、多くの先進国において「がん」は主要な死因であり、今後世界全体で高齢化が進むにつれ、がんで亡くなる人は増え続けていくと考えられます。がんの治療法としては、手術以外に、化学療法(薬)・免疫療法・放射線治療が主に知られていますが、どれもあらゆるがんを根治できる、とは言えないのが現状です。がんを根治する薬は、なぜ簡単に見つからないのでしょうか。この理由の一つは、がんというのが一つの病気ではなく「様々な病気の集合体の総称」ということにあります。一つ一つのがんが異なる病気であるため、使うべき薬も変わってくるのです。どうすればがんを薬で治せるのか。そのヒントを、ビックデータ解析を用いた私自身の研究内容も踏まえてお話したいと思います。

第一講演
「音楽学の冒険 ---駄作・モーツァルト効果・FBI---」

沼野 雄司 氏

桐朋学園大学、ハーヴァード大学音楽学部


「音楽学 musicology」とは、音楽(あるいは音)を対象にした学問の総称です。歌や演奏が不得意な人はいても、音楽を聴くこと自体が嫌いという人はほとんどいないでしょうから、実はこの学問は誰にとっても身近なものなのです(日本とは異なり、アメリカではほとんどの大学に―ハーヴァードにもMITにもタフツにも―音楽学専攻課程があります)。本発表では、このディシプリンの魅力を知っていただくために、前置きに続いて、僕自身が来年頭に出版予定の書物で展開している様々なアプローチの中から、3つをご紹介したいと思います。ひとつめは「駄作」の研究。これは、「傑作」こそを研究すべきとしてきた従来の音楽学への批判でもあります。ふたつめはいわゆる「モーツァルト効果」をめぐるあれこれ。いわゆる「理系」の研究者の方々にも、比較的身近に感じられるのではないかと思い、選んでみました。そして最後は現代政治史から見た音楽の研究。アメリカ史における汚点ともいえる1950年代の「赤狩り」と音楽の関係を、意外な資料から探ります。

第二講演

第186回 講演会(オンライン開催)

日時: 2021年1月16日(土) 16:00-18:20
会場: Zoomによるオンライン開催
「炎症性疾患のドラッグディスカバリー研究 〜免疫細胞の暴走を止めろ!〜」

寒原 裕登 氏

Principal Scientist
Quench Bio


細菌やウイルスが感染したときには、我々の体の中にある免疫細胞が活性化され、それに伴う炎症が引き起こされます。炎症は生体の防御機構として必要な反応ですが、過度な炎症反応は炎症性疾患を引き起こしてしまいます。炎症性疾患には関節性リウマチ、潰瘍性大腸炎、痛風、敗血症など様々なものがありますが、その多くはまだ治療薬がなく困っている患者さんが世界中に存在します。これら炎症性疾患に対する治療薬の研究開発はどのように行われているのでしょうか?今回の講演では、ドラッグディスカバリー研究(創薬研究)の全体像、私がアカデミアと創薬スタートアップの両方で取り組んできた炎症性疾患の治療薬研究に関するお話をします。

第一講演
「政府間関係の比較研究」

朴 相俊 氏

大阪大学


皆さんは現在どこに住んでいますか?BJRF(Boston Japanese Researchers Forum)という名前からすると、米‘国’のマサチューセッツ‘州’に位置したボストン‘市’に住んでいる方が多いのではないでしょうか。本講演では、‘国―州(県)―市’の関係に着目した権限配分の問題、いわゆる「政府間関係」について紹介したいと思います。政府間関係の研究は、行政学の核心分野として発展してきたテーマです。日本においても地方分権改革を機に話題になったことがあります。特に 2000 年の分権改革以降、国・自治体間のみならず、都道府県と市区町村間の関係性も変わりつつあることから様々な研究が進んでいます。東日本大震災やコロナ禍で都道府県によって対応の違いが注目を集めている中、誰がどこまでの権限を持つかは、国や自治体の可能性と限界を考える際に欠かせない問題です。本講演が皆さんと一緒に「政府間関係」について考える機会になればと思います。

第二講演
© 2000-2024 Boston Japanese Researchers Forum