「夢の超特急」新幹線が開業したのは、東京オリンピックが開催された1964年の事でした。それ以来、日本中に広がった新幹線を始め、世界でも多くの高速鉄道が実現してきました。今日では、安全・快適・便利な都市間の移動手段として、その地位を確立しています。本講演では、まず、安全を保つ仕組みや、各国のシステムの違いなど、高速鉄道の進化の過程をご紹介します。次に、現在ホットな話題である「海外展開」という観点から、激しさを増す高速鉄道の売り込み競争について、各国の戦略や現状について考えます。そして、これからの「夢の超特急」として、2027年の開業を目指す中央リニア新幹線について、超電導リニアの原理や技術に触れながらその動向をお話しします。誕生50周年という節目を迎えた高速鉄道について、過去・現在・未来の視点から様々な側面をご紹介できればと思います。
世界中で自分しか持っていない物質を作ったり、思い通りに材料の性質を変えたりできたら楽しいと思いませんか?化学の面白さのうちのひとつは様々なものをつくり出せるところにあると思います。化学が扱うものは多岐に渡りますが、今回は講演者の専門であるゼオライトという材料を中心として、極小の”空間”をつくり上げるというお話をさせて頂きます。1ナノメートル(10のマイナス9乗メートル)以下の空間内では分子を大きさによってふるい分けたり、化学反応で決まった大きさのものだけができてきたりといったことが起こります。どうやってそんなものをつくっているのか、難しく感じられるかもしれませんが、原料を混ぜると”勝手に”できます。この点が化学の面白さのふたつ目だと思っています。このような材料が実際にどのように使われているのか、環境やエネルギーなどの問題とどのように関係しているのかも示せればと思っています。
生命を創ろうとしている科学者がいるらしい。そんな話を聞くとみなさんはどんなイメージを持ちますか?「なんだか怖そう、法規制はどうなってるんだ」と思う方も、「iPS細胞と再生医療の話題がニュースを賑わせている今、新たな治療方法が将来確立されるかもしれない」と期待を抱く方もいるでしょう。これらの倫理的、法的、もしくは医学的なことを考える上では、そもそも現在、科学者はどのような研究を行い、どのレベルで生命を操作し、創ることができているのかを知る必要があります。本講演では、生命の基本構成単位である細胞に着目し、「そもそも生命を創るってどんなこと?」という問いをみなさんと一緒に考え、細胞を創るアプローチが実はアートや哲学としても考えられるのかもしれない、といった話にも触れてみたいと思います。後半では講演者が大学院を通して、創って理解を試みてきたカエルの卵の研究をご紹介します。
ここ数年で、3Dプリンティング、Additive Manufacturing、デジタルファブリケーションといった言葉をメディアで目にする機会が多くなりました。2012年末にクリスアンダーソン氏に よる”MAKERS”が出版されたことで,3Dプリンティングは,一部では第三次産業革命とまで言われています.しかし,いったい何が凄いのでしょうか.
本講演では,ここ数年の製造業・医療・バイオ分野等での最新の3Dプリンティング技術や市場動向を紹介した上で,このブームを少し冷静に俯瞰し,3Dプリ ンティング技術の本質を工学的な視点から,掘り下げてみようと思います.そのために,「そもそもプラスチックはどうやってつくるの?」という問にも丁寧に お答えします.市場に出回っているプラスチックの9割を作り出す成形加工の王様,射出成形の技術を中心に概説し,3Dプリンティングと比較します.是非, どっぷりと成形加工の世界に浸かって下さい.
現代では、世界の死亡の9.4%(年間530万人)が運動不足により引き起こされているという推計があります。運動(身体活動)不足は様々な病気や障害のリスクを高めることが分かっていますが、世の中が便利になる中で、人々が体を動かす機会は少なくなる一方です。皆さん(あるいはご家族)は普段、どんな生活を送っていますか?運動習慣に限らず、人の行動を変えることは難しいテーマです。本講演では、この「運動不足」の問題にマーケティング、行動科学、公衆衛生学などの知見を活かして取り組んできた研究をご紹介します。また、長い冬を目前に控えたボストンで、デスク・ワーク中心の研究者が知っておきたい簡単な体のコンディショニング法についてもご紹介したいと思います。
ニュースや新聞記事で、「再生医療」や「iPS細胞」という活字を最近特によく目にすると思いませんか?色々な所で頻繁に見聞きするようになったので、実際のところ今なにがどう進歩しているのか、そもそもなにがすごいと思われているのか?を正確に把握していらっしゃる方は、もしかしたら少ないかもしれません。最近よくみかけるようになった理由の一つとして、昨年2014年11月25日に再生医療新法/改正薬事法が施行された事が挙げられます。これらの法律改正を軸とした新たな研究、ビジネスにバイオテック企業のみならず、国内外の大手製薬業界も相次いでこの分野に投資、参入し、今大きなムーブメントを起こしています。 昨年の新法施行からもうすぐ1年が過ぎようとした今、これらの法律改正によって何が変わったのか?演者が現在所属するiPS細胞研究所(CiRA)から、最新の研究状況をレポートするとともに、現在演者が実際に取り組んでいるiPS細胞を用いたT細胞がん免疫療法の少し専門的な内容から、ノーベル賞を受賞したiPS細胞の発見とは何がすごかったのかなど、基本的な内容も含めてお話します。またiPS細胞を日本で初めて事業化したバイオベンチャーのボストン支店設立に関わった経験から、再生医療ビジネスの最近の事例に加え、実際にそれを商品化し、上場に成功した企業がどのような事業を行っているのかもご紹介させて頂きます。会場の皆さんが楽しみながら、このムーブメントをサイエンスとビジネスの両輪で大きく捉えて頂く機会になれば幸甚です。
本講演では、現在の日本の宇宙開発における課題の一側面を、「ビジネス」(市場競争)的な要素を交え、少し違った角度から宇宙開発の「今」について紹介したいと思います。
宇宙は「夢」「神秘」「憧れ」などの単語と関連性が深いというのは一致する見解ではないでしょうか。一方で「国家財政」、この単語とも等しく、いやそれ以上に仲の良い存在でもあります。厳しい状況が続く国家財政を踏まえ、日本の宇宙開発予算は良くて横這い、そして既に欧米に追い付け追い越せの時代を終えた今、何を目標に宇宙開発を行うのか、効率性と独創性が同時に問われる状況となっています。
米国では、イーロン・マスクという天才起業家が立ち上げたスペースX(民間発のロケット製造ベンチャー)が活躍を続け、グーグルも宇宙ビジネスに参入しました。官民が一体となった新しい宇宙開発の在り方を米国でもうまく提示できている訳ではありません。
が、日本の厳しい環境を克服するための糸口として、持続可能な宇宙開発を目指す上で、「ビジネス」的なアプローチが持つ力は計り知れないのではないか。今回はそんなお話です。
ここ50年で人類の宇宙に関する知識は格段に広がりました。ですが広大な宇宙にはまだ分からないことがたくさんあります。
そもそも宇宙がどうやって始まったのかもよくわかっていませんし、重たい星の一生の終わりに起きる大爆発スーパーノヴァや、その後にできる中性子星・ブラックホールにも未だに多くの謎があります。
これらの疑問に答える手段として現在注目されているのが、「重力波」です。
アインシュタイン博士によって100年も前に予測されながら、人類に重力波を観測するのは無理だろうと長年言われ続けてきました。
なぜなら重力波を計測するためには、10のマイナス19乗メートル(ナノのナノよりさらに小さい)という途方もなく小さな距離を測らなければならないからです。
ですがテクノロジーの発達により、重力波はあと数年で観測できるところまできており、宇宙の様々な謎を解き明かす鍵になるのではないかと期待されています。
本講演では重力波を話の起点としながら、現在分かっている宇宙のことや、最先端の長さ計測技術のことをお話したいと思います。
物理というと身構えてしまう方もいるかもしれませんが、誰にでも分かりやすく説明しますのでぜひ聞きに来てください。宇宙に関する質問も大歓迎です。
普段生活している中で「自治」という言葉を耳にする機会はありますか。たとえば「住民自治」とか「地方自治」とか。おそらく、ほとんどの人は自分には関係ないと思っているでしょう。「説明しろといわれましても意味わからんからできません」的な感じです。でも、時々「自治は大事だ」と声を上げている人がいます。自治ってそんなにいいもんなんでしょうか。お金がもらえたり、おいしいものが食べられるようになるのでしょうか。
自治とは、簡単に言うと自分の住んでいる場所について自分たち自身で考えたり、意見を言ったり、何かを変えるために行動したりすることです。はっきりいって、関心を持たないでも十分生きていけます。プラカード掲げた「住民運動」を想像すると、距離を置きたくなりますよね。お金が儲かるわけでもないのにいろいろ面倒だし、がんばってもぜんぜん見返りがないことだってあります。それでも、私は自治って大事だと思います。その理由をお話できればと思っています。
本講演では現代数学の入門として、幾何学と物理学の最近の交流についてお話ししたいと思います。特にここ20年急速に発展した超弦理論が示唆する世界像を紹介します。
自然という書物は数学の言葉で書かれている、とはガリレオ・ガリレイの言葉です。日本語は我々の日常を不自由なく記述するように作られていますが、非日常的な世界を記述するには不十分であることが知られています。例えば、極微の世界は量子力学、極大の世界は相対性理論という言葉を通して初めて理解が可能になります。数学を学ぶということは新しい言葉を学び、新しい世界を見ることと言えるでしょう。一方で、量子力学や相対性理論で使われる数学は100年以上前のものであり、それ以降の数学や物理学の発展はあまり知られていません。そこで今回は簡単に歴史を振り返りながら、幾何学と物理学の最近の話題を紹介します。予備知識は特に要りません。
2011年3月11日、私は宮城県の松島基地を指揮下に持つ、航空自衛隊の航空教育集団司令官でした。航空教育集団は新入隊員の教育から、専門技術の教育、パイロットの養成まで、航空自衛隊ほぼすべての教育を担任します。震災の日から、私の仕事の焦点は、必要な教育を続けながら指揮下約6,000人の隊員や装備品の一部を災害救助のために派遣すること、航空機28機を含め基地の全機能を喪失した松島基地を復旧すること、松島基地で実施していたパイロットの養成教育を継続することになりました。私は災害派遣活動の直接的な指揮官ではありませんでしたから、細部を説明することは叶いませんが、3自衛隊が統合的に活動した活動の全般については把握していましたし、松島基地にも何度も足を運びました。私が保有している資料は限られてますが、その範囲内で自衛隊の活動の全体像を皆様にご理解いただければと思います。
演者は2011年4月より、福島県浜通りにて内部被ばく検査を中心に放射線被ばく対策に従事してきた。県内では被ばく検診結果が順次公表され、現状の日常生活上の慢性被ばくは非常に低いレベルに抑えられていることが分かっている。
しかしながら、現状の放射線被ばくに対する認識や不安は一様ではない。放射線に関して、気にしない、日常生活での会話には出さない、寧ろ触れないで欲しい。と感じる住民が増えつつある一方、県産の食品に対する忌避傾向は、若い世代に依然として強い。学校教育の場での妊娠・出産、将来への健康不安は依然として多くの生徒から聞かれる。
災害初期の掛け違いや不信、復興速度の差、生産者と消費者、賠償金問題、汚染レベル、文化的背景の差など、説明しうる理由は多くあるが、現状に対し対策を行う我々はどこを目指し、何を出来うるのであろうか。現場での経験を踏まえ、現状の検査結果、不安および問題点、今後の方向性について議論したい。
被災地にみられる社会問題には、貧困、教育、環境、介護、人口減、移民に関することなど、震災以前から存在していた問題が顕わになったものも多 く、また日本や世界の他地域に共通する課題も多くあります。その中でも、公的セクターや民間セクターだけでは解決の難しい問題に取り組んだり市民 のニーズに応えようと、非営利団体や社会起業家たちが、今も被災地で活動しています。ただ、彼らの意義ある活動が持続可能な形で育っていくために は、まだまだリソースやキャパシティが不足しています。WITでは、そのような社会起業家に対して、経営面、資金面、事業評価面などの支援をして います。研究者と社会起業家との間の協働構築も行っています。
本講演では、被災地で活動する社会起業家の活動や、WITの支援の様子をご紹介しながら、東北からの学びをどう今後の市民社会づくりに生かしてい けるか、議論できればと思います。
国際法の歴史、と聞いて、皆さんはどのような印象を持つでしょうか。すぐに何かを心に思い浮かべるのは少し難しいかもしれません。学問分野としては比較的新しく、1990年代後半から世界的規模で注目されるようになりました。法学(法制史)、政治学(外交史)、歴史学、思想史、さらに国際関係論など、複数の学問領域に跨る分野のため、世界的に研究者の情報網が形成途上にあり、おそらく今後発展するだろうと思われます。
今回の報告では、(1) なぜ国際法史の研究が必要だと講演者が考えるのか、(2) 具体的に何を対象としてどのように研究しようとするのか、以上の二点を主な柱にして、国際法史の世界の一端をご紹介したいと思います。ビトリア、ジェンティーリ、グロティウス、この三人の名前のうち誰か一人でも聞いたことがある方がいれば、どうぞご期待下さい。残念ながらそうでなかった方も、どうしてこの三人の名前を挙げたのか、当日に解説いたします(講演者の宿題です)。
私達の皮膚・目・髪の色がバラエティに富むのはなぜでしょう?どうして日に焼けるのでしょう?メラノサイト、メラノーマ、とは?
本講演では、メラノサイト(色素細胞)−皮膚・目・髪の色を決めるメラニン色素を作る細胞−とメラノーマ(悪性黒色腫)−メラノサイトから発生する皮膚がん−について、今までに分かっていることと今後解明が求められることを−身近なものから専門的なものまで−様々なトピックスを交えてご紹介します。アラカルト形式で用意しますので、みなさんのお好きなトピックスをお摘みください。
また、本講演は、メラノサイトの生物学を通した(私が考える)サイエンスのイントロダクション、の側面も併せ持ちます。本講演が、日頃サイエンスに馴染みの無い方にとってサイエンスに興味を持ってもらうキッカケとなりましたら幸いです。
皆さんが日々使っているケータイがどうやって『つながって』いるのかご存知でしょうか?海外を旅行しているお友達のケータイにも電話をかけられるって不思議だと思いませんか?また、災害時にどういう制御をしているのか、おめでとうコールはなぜ規制しなければならないのかについても触れます。実は私たちオペレータは、ネットワークに様々な仕組みを埋め込んでおり、多くの方々の通話や通信を効率良くコントロールできるようにしているのです。
次に、皆さんが国外でも自分のスマートフォンを使えるのは何故か考えたことはありますか?海外ベンダーの作ったスマートフォンが日本でも使えるのは何故でしょう?これらは世界中のオペレータやベンダーが力を合わせて取り組んでいる国際標準化活動の成果によるものです。どのようにして国際標準が規定されているのかについてもご説明します。
またMVNO(仮想移動体サービス事業者)という言葉を最近良く耳にすると思います。ビックカメラやTSUTAYAもモバイルサービスを提供できるようになりました。その仕組みについてもご説明します。更にはフィーチャーフォン(ガラケー)からスマートフォンに移っていく中で、ビジネスモデルやエコシステムがどのように変わってきているのかについても触れます。
最後に、モバイル通信がどこまで高速化していくのか、LTEの次は何が来るのか、モノのインターネット(Internet of Things)がどのように私たちの生活を豊かにしていくのか、といったちょっと先のワクワクするような話しも出来ればと思います。
グローバル化した社会で活躍できるようにと、幼いころからの海外経験や、バイリンガル教育を推進する動きがあります。しかし、発達段階の海外経験は、実際は子供にどういう影響をあたえるのでしょうか。人がバイリンガルになる過程は想像以上に複雑ですし、言語と文化、そしてアイデンティティーは切っても切れない関係にあります。そのため、華やかなイメージの帰国子女には、実は見落とされがちな悩みがつきものです。他方、成人してからトレーニングできるグローバルスキルも、単純な英語力にはとどまらないのではないでしょうか。
自分自身がアメリカからの帰国子女である体験、そして現在、事業を通じて出会う海外在住の日本人の子供達、帰国子女、日本にいながらインターナショナルスクールに通う子供たち例から、バイカルチャー・バイリンガルになる難しさと、その恩恵について考察してみたいと思います。
ニュースを見るとES細胞やiPS細胞などいろんな幹細胞が出てきます。でもiPSて一体何だろう?何の役にたつの?STAP細胞て何だったの?他にもどんな幹細胞があるの?
本講演では幹細胞の現役研究者が、今さら聞けないような基本的なことから、最近の成果や話題についてひたすらしゃべくります。途中でどんどん質問歓迎します。初めての人から専門家まで楽しんでいただければと思います。
朝起きてから夜寝るまで、皆さんがいつも使っている水道水がどこから来ているのか、考えてみたことはありますか。日本の水道はいつ頃どこで、どうして始まったの、浄水場でどのように浄水処理されているの、水道水は飲んでも大丈夫なの、などなど、知っているようで知らない水道の疑問にお答えします。あわせて、ボストン、ケンブリッジの水道についても簡単にご紹介します。
また、これからは、例えば古くなった設備や水道管を計画的に更新し、より地震に強いものにしていくことが必要です。でも、国からの補助金は減り続け、料金収入も減り続け、そして若い技術者も減り続け… こうした中で、50年後、100年後も安定して水道事業を続けていくための取組みについてもご紹介します。